「天は二物も三物も与える」とは?意味・由来・例文・類語・英語表現まで徹底解説
容姿が整っていて、仕事もできる。運動神経に恵まれ、話も面白い。そんな人を見たとき、「天は二物も三物も与えるものだ」と感じたことはないでしょうか。
「天は二物も三物も与える」は、複数の優れた才能や長所を持つ人を表す言い回しです。一方、昔から知られることわざは「天は二物を与えず」。この二つは正反対の意味に見えますが、表現の成り立ちや使われる場面を整理すると、その違いが明確になります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 意味:「天は二物も三物も与える」は、複数の才能や長所に恵まれた人を称賛する表現。
- 由来:「天は二物を与えず」は辞書に収録されたことわざで、1832年刊の洒落本にも古い用例が確認できる。
- 使い分け:相手を褒めるなら「天は二物も三物も与える」、人には長所も短所もあると伝えるなら「天は二物を与えず」が基本。
【意味と違い】「天は二物も三物も与える」はどんなときに使う?
「天は二物も三物も与える」は、生まれ持った才能や優れた資質を複数備えている人を見て、その恵まれた状態を表す言い回しです。「二物」は二つの優れたもの、「三物」はそれ以上の長所や才能をたとえています。
たとえば、容姿の美しさと高い知性を兼ね備えた人、仕事で成果を上げながら芸術的な才能も発揮する人、スポーツと学業の両方で活躍する人などが当てはまります。
ただし、辞書に定着したことわざとして広く知られているのは「天は二物を与えず」です。「天は二物も三物も与える」は、その定型表現を反転させた言い回しとして理解すると正確です。独立した古典的ことわざとして、確立した由来があるわけではありません。
両者の違いを簡単に整理すると、次のようになります。
- 天は二物を与えず:人にはそれぞれ得意なことと苦手なことがあり、長所ばかりを備えた人はいないという考え方。
- 天は二物も三物も与える:一人の人間が複数の優れた才能や長所に恵まれていることへの驚きや称賛。
ここで注意したいのは、後者が必ずしも「生まれつきの才能」だけを意味するわけではないことです。努力によって身につけた技術や、経験を通じて磨かれた能力も含め、複数の分野で優れた力を発揮する人に対して使えます。
【由来と歴史】「天は二物を与えず」はいつから使われている?
「天は二物を与えず」の由来について、特定の人物が作った言葉だと断定できる確かな出典は知られていません。中国の故事成語として成立した言葉だとする根拠も明確ではなく、聖書の特定の一節が直接の起源だと確定しているわけでもありません。
一方、歴史的な用例については、辞書から手がかりを得られます。小学館の『精選版 日本国語大辞典』は、1832年刊の洒落本『傾城情史』に「天二物を下さず」という表現の用例を挙げています。「天は二物を与えず」と近い意味を持つ、古い言い回しが江戸時代に使われていたことが分かります。
また、コトバンクに掲載されている『ことわざを知る辞典』では、芥川龍之介の小説『戯作三昧』(1917年)における用例も紹介されています。少なくとも近代文学の中でも、このことわざが人の才能や能力の偏りを表す言葉として使われていたことがうかがえます。
「天」という言葉には、人間の力では自由に決められない運命や、生まれ持った資質を授ける存在という含みがあります。そこから、人間には得意なことも不得意なこともある、すべてを兼ね備えた人はいないという考え方が、この表現に結びついています。
ただし、ことわざは人生の傾向を短く言い表したものです。すべての人に必ず当てはまる法則や、才能の数を制限する科学的な原則ではありません。
【使い方と例文】褒め言葉として自然に使うコツ
「天は二物も三物も与える」は、複数の長所を持つ人に対する称賛や、うらやましさを表す場面で使えます。ただし、相手との関係や話題によっては、皮肉や嫌みに聞こえることもあるため、文脈が大切です。
例文1:容姿と知性を褒める
「彼女は美しいだけでなく、知識も豊富で説明も分かりやすい。天は二物も三物も与えるんだなと思う。」
外見と知性、さらにコミュニケーション能力という複数の長所を評価する使い方です。相手の魅力を具体的に挙げることで、自然な称賛になります。
例文2:仕事と趣味の両方で活躍する人を表す
「仕事で優秀なうえに、休日には本格的なピアノ演奏まで披露するなんて、天は二物も三物も与えるものだ。」
仕事上の能力と芸術的な才能という、異なる分野での活躍に驚いた場面です。
例文3:学業とスポーツの両立を称える
「成績は学年トップクラスで、陸上競技でも大会に出場している。まさに天は二物も三物も与える人だ。」
複数の分野で成果を上げている人を紹介する際に適しています。
例文4:少しくだけた会話で使う
「料理も上手で語学も堪能、しかも人付き合いまで上手なんて、天は二物も三物も与えるね。」
親しい人との会話や、相手の意外な長所を知った場面でも使えます。
一方、「天は二物を与えず」の例文は?
「彼は数学が得意だが、絵を描くのは苦手らしい。天は二物を与えずということだろうか。」
「彼女は歌唱力が抜群だが、ダンスにはまだ課題がある。天は二物を与えずというけれど、それぞれに得意分野があるものだ。」
このように、特定の能力が優れている人にも別の苦手分野がある、という意味で使います。ただし、実際の相手に向けて使うと欠点を指摘しているように聞こえる場合があります。本人を褒めたいのであれば、「天は二物も三物も与える」のほうが意図を伝えやすいでしょう。

【類語・対義語を比較】一得一失・虻蜂取らず・一長一短との違い
「天は二物を与えず」に似た言葉はいくつかありますが、意味はそれぞれ異なります。特に「一得一失」「一長一短」「虻蜂取らず」は混同されやすいため、意味の中心を押さえておきましょう。
| 言葉 | 意味 | 使い分けのポイント |
|---|---|---|
| 天は二物を与えず | 人には長所も短所もあり、長所ばかりを備えた人はいないという考え方。 | 人の才能や資質について述べる。 |
| 天は二物も三物も与える | 複数の才能や長所に恵まれていること。 | 多才な人への称賛や驚きを表す。 |
| 一得一失(いっとくいっしつ) | 利益がある一方で、損失もあること。 | 物事の利点と不利な点を比較する。 |
| 一長一短(いっちょういったん) | よい点もあれば、悪い点もあること。 | 人だけでなく、方法や商品、制度などにも使う。 |
| 虻蜂取らず(あぶはちとらず) | 欲張って複数のものを狙った結果、どちらも得られないこと。 | 欲張りすぎることへの戒めに使う。 |
| 才色兼備(さいしょくけんび) | 優れた才能と美しい容姿を兼ね備えていること。 | 複数の長所を持つ人を称賛する際の関連表現。 |
| 文武両道(ぶんぶりょうどう) | 学問と武道、転じて勉強と運動の両方に優れていること。 | 特に学業と運動の両立を表す。 |
「一得一失」の意味は、何かを選んだり実行したりすることで、利益と損失の両方が生じることです。たとえば、通勤時間は短くなるものの家賃が高くなる引っ越し先について、「この物件は一得一失だ」と表現できます。人が複数の才能を持つかどうかを直接述べる言葉ではありません。
「一長一短」の意味は、どの選択肢にもよい点と悪い点があるということです。「天は二物を与えず」と同様に、完璧なものばかりではないという発想に通じますが、こちらは人の性格や才能に限らず、幅広い対象に使えます。
「虻蜂取らず」の意味は、二つ以上のものを欲張って追いかけた結果、結局どちらも手に入らないことです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」も近い意味を持ちます。長所と短所の共存を表す「天は二物を与えず」とは、戒めの対象が異なります。
「天は二物を与えず」の類語としては、「天は二物を下さず」や「角あるものは牙なく、牙あるものは角なし」などが挙げられます。いずれも、優れたものをすべて兼ね備えるのは難しいという発想に近い表現です。
対義語については注意が必要です。「天は二物を与えず」に対する、誰もが認める定型的な反対のことわざがあるわけではありません。意味の上で反対方向の表現として使いやすいのは、「才色兼備」「文武両道」「多才多芸」などです。これらは複数の能力や長所を備えた状態を肯定的に表しますが、厳密な意味での対義語とは区別する必要があります。
【英語表現と誤解】小学生にも分かる本当の意味
「天は二物を与えず」を英語で表す際には、直訳だけでなく、意味の近い慣用表現を使う方法があります。
God doesn't give with both hands.
直訳すると「神は両手で与えるわけではない」という意味です。一人の人間にあらゆる長所が与えられるわけではない、という考え方を伝える表現として紹介されています。
God doesn't give two gifts to one person.
こちらは「神は一人の人に二つの贈り物を与えない」という意味の説明的な表現です。日本語のことわざに近い意味を伝えられますが、英語では文脈に応じて言い換えるのが自然です。すべての英語圏で同じ頻度で使われる定型表現だと考える必要はありません。
また、「天は二物も三物も与える」を英語で表現するなら、たとえば次のように言えます。
Some people seem to have it all.
「すべてを持っているように見える人もいる」という意味です。複数の才能や魅力を備えた人への驚きを、日常的な英語で表現できます。
Some people are blessed with many talents.
「多くの才能に恵まれている人もいる」という意味で、複数の能力を持つことを肯定的に伝えられます。
では、「天は二物を与えず」の本当の意味は何でしょうか。
よくある誤解は、「一人の人間は絶対に二つ以上の才能を持てない」という意味に受け取ることです。しかし、辞書の説明が示すのは、人にはさまざまな長所や短所があり、長所ばかりを備えた人はいないという一般的な考え方です。
実際には、複数の分野で優れた能力を発揮する人もいます。そのため、「天は二物を与えず」は例外の存在を否定する絶対的な法則ではなく、人の不完全さや個性の違いを表す比喩として理解するのが適切です。
小学生向けに簡単に説明すると、「天は二物を与えず」とは、「誰にでも得意なことと苦手なことがあるよ」という意味です。勉強が得意な人でも、運動は苦手かもしれません。絵を描くのが上手な人でも、計算は苦手かもしれません。
反対に、「天は二物も三物も与える」は、「勉強も運動も得意で、絵まで上手な人がいるんだね。すごいな」という気持ちを表す言い回しです。二つ、三つという数字は、才能の数を正確に数えているのではなく、いくつもの長所を持っていることを強調しています。

【天は二物を与える人の特徴】才能だけでは測れない魅力とは
「天は二物も三物も与える」と言われる人には、複数の分野で能力を発揮しているという共通点があります。ただし、何をもって多才と感じるかは、見る人や状況によっても変わります。
たとえば、専門的な仕事の知識と人に伝える力を兼ね備えている人は、職場で幅広く活躍できます。語学力と異文化への理解を持つ人は、海外との仕事で力を発揮できるかもしれません。音楽の才能と継続的な練習習慣を持つ人は、演奏技術を高めながら表現の幅も広げられます。
こうした人の特徴を考える際、次の三つの視点が役立ちます。
- 能力の組み合わせ:異なる分野の知識や技術を持ち、それらを組み合わせて成果を出している。
- 継続的な努力:生まれ持った資質だけでなく、練習や経験を重ねて複数の能力を磨いている。
- 能力を発揮できる環境:学習の機会や周囲の支援、挑戦できる環境に恵まれ、力を伸ばしている。
ここで見落としたくないのが、他人から見える才能と、その人自身の努力や苦労は必ずしも一致しないという点です。複数の分野で活躍している人でも、得意なことばかりに取り組んでいるとは限りません。見えないところで時間をかけ、失敗を重ねながら技術を磨いている場合もあります。
また、何か一つの分野に集中して成果を出す生き方も、複数の分野で活躍する生き方も、それぞれに価値があります。「天は二物も三物も与える」という言葉を使う際に、才能の多さだけで人の価値を判断する必要はありません。
相手の魅力を伝えたいのであれば、「多才だね」と一言でまとめるだけでなく、「専門知識が豊富なのに、説明も分かりやすい」「仕事だけでなく、趣味にも本格的に取り組んでいる」など、具体的な長所を挙げると、より誠実な褒め言葉になります。
【プロの結論】「天は二物も三物も与える」という表現は、複数の才能を持つ人への驚きや称賛を伝えるのに適しています。一方、「天は二物を与えず」は、人にはそれぞれ異なる長所と短所があるという考え方を表します。どちらも、人間の能力を一つの尺度だけで決めつけないための視点として活用できます。
【天は二物も三物も与える】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「天は二物も三物も与える」は正しい日本語ですか? A1:意味の通る自然な言い回しです。ただし、定型的なことわざとして辞書に広く収録されているのは「天は二物を与えず」です。「天は二物も三物も与える」は、その表現を反転させて複数の才能に恵まれた人を表す言い方です。
Q2:「天は二物を与えず」の由来は何ですか? A2:特定の人物や古典に由来するという確かな説は定まっていません。小学館の『精選版 日本国語大辞典』では、1832年刊の洒落本『傾城情史』に「天二物を下さず」という用例が紹介されています。
Q3:「天は二物を与えず」の対義語は何ですか? A3:厳密に対応する定型的な対義語はありません。意味が反対方向の表現としては「才色兼備」「文武両道」「多才多芸」などが挙げられます。
Q4:「天は二物を与えず」は褒め言葉ですか? A4:基本的には、長所と短所の両方が人にはあるという考え方を表します。相手の才能を直接褒める言葉ではありません。褒めたい場合は「天は二物も三物も与える」「多才だね」などが適しています。
Q5:「天は二物を与えず」を小学生に説明するには? A5:「誰にでも得意なことと苦手なことがある」という意味だと説明すると分かりやすくなります。ただし、実際には勉強も運動も得意な人がいるため、絶対に二つ以上の才能を持てないという意味ではありません。
まとめ:意味を正しく理解し、相手に合った表現を選ぼう
「天は二物も三物も与える」は、複数の才能や長所を持つ人への驚きや称賛を表す言い回しです。対して「天は二物を与えず」は、人にはそれぞれ長所と短所があるという考え方を示す、古くから使われてきたことわざです。
由来をたどると、1832年刊の洒落本に近い表現の用例が確認でき、1917年の芥川龍之介『戯作三昧』にも使用例があります。一方で、特定の古典や人物を直接の起源とする説が確立しているわけではありません。
類語や関連語を使い分ける際は、「一得一失」は利益と損失、「一長一短」はよい点と悪い点、「虻蜂取らず」は欲張った結果の失敗を表すことを覚えておくと便利です。「才色兼備」や「文武両道」は、複数の長所を肯定的に表す関連表現として活用できます。
ことわざは、人間や社会を理解するための手がかりですが、すべての人に当てはまる絶対的な法則ではありません。相手を褒めるなら具体的な長所に注目し、長所と短所について話すなら決めつけを避ける。その場に合った言葉を選ぶことが、表現を正しく使いこなす一番の近道です。 (出典: 天 は 二 物 も 三 物 も 与える(Yahoo!ニュース))